「政策立案のための問題発見トレーニング」をはじめます。そのきっかけについて。

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「デザイン思考」のアプローチで政策立案を行う問題発見トレーニングを、滋賀県庁の若手職員有志で開催することになりました。

きっかけは色々なのですが、いろんな思いが重なって狼煙を上げてみようと Facebook でつぶやいてみたら、思ってた以上に反響があったので、「みんな本気でやるならやるよ」ということで始めてみた、という経緯です。

その色々なきっかけというのは、ざっくりとこんなところです。

1. 去年の夏、シリコンバレーを視察した知事が帰国後に「デザイン思考と行政施策」について言及した

スタンフォード大学の「d.school」については、もちろんビジネス展開は可能性があるのですが、行政の課題解決能力を向上させる意味においても、非常に有効な手法ではないかと感じたところでございます。

知事定例記者会見(2016年8月30日)/滋賀県

私たち行政もいま一度現場に入り、固定観念を排除して「本当の課題は何なのか」と課題を再定義し、たくさんのアイデアを出し合いながらその課題の解決に向けて挑戦していくことが必要だと感じています。

デザイン思考とは?/滋賀県

今回のトレーニングはまさにこの「デザイン思考」というか、ミクロ視点での政策立案をベースにしています。個人的にもマクロ統計だけで政策を考えていてもリアリティがないと思うし、もっと「県民」のことを客観的に捉えられる政策アプローチが必要じゃないかと。

また政策立案も、いまの動き方ではとにかくじっくり立案に充てられる時間や余裕がない。本来は問題発見にこそ時間がかけられるべきであり、かつそこをオープンにしていくプロセスが重要じゃないかと思うので、この知事の言及に後押しされる形でやってみようと。まぁ1年近くかかりましたが。。。

2. 経産省の「次官・若手プロジェクト」に対する事務次官の思いに共感した

内容自体の議論はさておき、そもそも同じ志をもった若手職員有志が集まって、偉い人の顔を気にせずしっかり “中長期” の政策研究ができる土壌がいいなと思いました。

霞が関の若手は非常に優秀ですが、組織の壁は厚い。忙しさからどうしても目の前の仕事に意識が向きがちです。それぞれの所属や肩書、仕事、思惑などから離れ、新たな国の形を冷静に健全に議論するプラットフォームが必要だと思いました。 こうした動きは他の省庁にも伝えています。資料の提出者名を「プロジェクト」として経産省の名前にしなかったのは、組織の論理を離れ、外部の有識者も含めた幅広い議論を呼びたいという思いからです。 ただ非公式とはいえ空理空論や「若手のお勉強会」で終わっては意味がありません。議論の場をいつどのように公開し、立案した戦略をどう広めていくのか。そうした手続きや方法論も具体化する必要がある。反対を押し切って構造審議会に資料を出させたのはそうした考えからです。

若手に託す「次の日本」 経産次官の思い :日本経済新聞

そもそも政策の方向性は議会や民意で決められていくものであり、行政職員だけで勝手にデザインするものではないと思っています。ただ、政策立案の能力がなければそのための材料を県民に開示することもできないだろうと思ってまして。

一方で政策研究や提言の機会については、既に県庁内ではいくつか制度や仕組みがあるんですが、組織的な壁や目の前の対応でそれどころじゃなかったりとかで、なかなか活用しきれないのも現状です。その辺りに対する「行政経営に対する提言」という意味合いも、今回のプロジェクトには含めています

3. 次期滋賀県基本構想に対して、組織や分野単位ではなく、若手職員個々の思いを表出する場があってもいいんじゃないかと思った

今年度から来年度にかけて、下記リンクにある滋賀県基本構想の次期構想策定が進められているのですが、この論点整理等についてあまり若手職員が自由に発言できる場ってないのですよね(意見照会は係宛に来るのですが、係→室・課・局→部へと稟議があがっていくなかで、なかなか個人的な思いって書きにくいのです)。10年先の未来を生きる若手職員らが基本構想に対して当事者意識を持てないまま、気が付いたら決まってるみたいな空気になってしまうのはどうだろうと

www.pref.shiga.lg.jp

先ほどの経産省事務次官の話にも関係するんですが、事務分掌とか一度取っ払ってみて、個々の思いありきで集まり、徹底して客観的な研究のうえで徹底して熱のある県のビジョン(案)を作り抜いてみるという場は、やはりどこかで必要だよなと思ったのです。それが各所属長の責任の及ばない形でオープンに表出されること、そして論考の価値があれば基本構想審議会や県政経営会議にあげる余地があること、そういう条件が揃えばやる意味があるんじゃないか。出来ることなら1年以上の時間をかけて。

 

 

…そんなわけで、今回のワークショップは、事務分掌や肩書きを超え、自分なりの思いを政策立案に繋げられるよう、デザイン思考を中心としたミクロ視点での問題発見トレーニングを行います。ただし独学でやっても限界がありますから、我々に近い世代のゲストをコーチとして招き、彼らからそのコツを掴んでいこうと。

7月の毎週金曜(定時後)に開催、今回は「ペルソナ開発」を中心に、デザイン思考による問題発見・洞察の手法を学びます。前半(7日・14日)は座学を中心に後半(21日・28日)は実践を中心に行い、前半後半それぞれ1回ずつの参加でもある程度の感覚が身につくようなプログラムを計画中です。

ひとまずパイロット的な位置付けで行うのと、まず県職員が立ち上がらなきゃという空気を作りたいので、7月のトレーニングは県職員限定で開催します。うまくいけば8月以降本格的にプロジェクトを動かし、その際はさらにオープンに参加を呼びかけるスタイルにしてみようと考えています。

トレーニングの様子はこのブログでレポートとしてまとめていきます。